明日の仕事を楽しみにするblog

小説

訪問営業のプロ

僕は、毎朝7時に家を出て会社近くのコンビニのイートインで朝ごはんを食べながら自分の時間を過ごすのが日課だ。

この数十分が仕事へのやる気を高めてくれる。

ある日、いつものようにコンビニでおにぎりを購入し、イートインスペースに行くと、先着がいた。

自分の母ぐらいの歳だろうか、小柄で垂れ目で優しそうな雰囲気をかもしだしているおばさんだった。

僕は、そのおばさんに軽くお辞儀をして、横に座り、おにぎりを頬張っていた。

『なんのお仕事なの?』

優しいトーンでゆっくりとした口調で彼女が話しかけてきた。

『え、営業をやってます!』

口の中のおにぎりを無理やり飲み込んで返事をした。

『私も昔、保険の営業をやっていてね、営業の人を見ると話したくなるんだよ。』

『あぁー、』ほぼ無言でうなずいた。

彼女は続ける。

『やっぱり営業で1番大切なのは、何回も行くことや、、、、、』

おばさんは、その後10分ぐらい営業にとって大切こと、ノウハウみたいなのをいっぱい語ってくれた。

すごくいい言葉ばかりで、大事なことを言っているのはわかるのだが、

すでに耳にタコが出来るほど聞いたことのある話ばかりで、何か心に響かない。

そして、その日から毎日そのおばさんと会うようになった。

正直、めんどくさかった。

朝は1人の時間を過ごしたい。

何か営業活動に利益があるのならいいのだが、このおばさんの話はすでにいろんな人から何回も聞いていることばかりで、改めて聞いたって利益になりそうにない。

そう思った僕は、毎日話しかけてくるおばさんを避けるようになった。

ある日、受注数が全く足りずイライラしている時に、またいつものおばさんが話しかけてきた。

僕は、ついに怒り口調で言ってしまった。

『あのな、おばさん!今の営業は昔とは違うんや!何回も訪問したら売れるとか、もう古するぎるんや!今の営業はそんなに簡単じゃない!』

おばさんは、悲しそうな顔でうつむいてしまった。

僕はフォローの言葉をかける訳でもなくその場を立ち去った。

それからおばさんは、そのコンビニに顔を出さなくなった。

それから数日がたったころ、ある新規のお客さんから電話がかかってきた。

商談だ。

そしてその会社は、ずーっと他社の製品を使っていたユーザーで弊社への商談の持ちかけは初めてだった。

受注が足りないこの時期に、この会社に売れれば大手柄だ。

僕は一目散に商談に向かった。

そして、商談はスムーズに進み、その日のうちに発注を決めてくれた。

何か違和感があった。長年他社ユーザーだった会社が、ろくに訪問もしていない僕から即決で発注してくれるなんて、おかしい。

そんな困ったような僕の様子を見て社長が話しかけてくれた。

『やっぱり疑うわな、笑。そりゃ俺だって、ろくに来やしない営業マンから商品は買いたくねぇよ、でも今回は決めてたんだ。お前から買うって。』

ろくに来ないと怒られたのにそれでも買うって言ってる言葉の意味がわからなかった。

『ど、どういうことですか?』

おそらくこの言葉が社長の言っていることに対しての100点満点の答えだろう。

『言うなって言われてたけど、これは言わないと納得いかないわな。牛乳屋のおばさんだよ。』

『え?』

『知ってるだろ?お前、毎日会ってたんだろ?
あのおばさんは、うち担当の牛乳配達屋なんだ。
んである日、机に置いてあったお前の名刺を見つけて、その日から毎日毎日やってきては、お前のこと話すんだ。いいやつだから、いいやつだからって。
それがもうしつこくてしつこくて。
でも、そんなおばさんに根負けしたよ。
んで、お前から買うって決めた。』

謝りたかった。おばさんに死ぬほど謝りたかった。おばさんは、一切自分の利益になんかならないのに、俺を売り出してくれていたんだ。

利益ばっかりみて大切なことをいつしか営業にとって1番大切なことを忘れていたことに気づいた。

そんなおばさんにぼくは、、、

あれから20年、毎日欠かさずコンビニに行っているが、おばさんには1回も会ってない。

たかやん

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