本紹介

スーパー営業マン

スーパー営業マン

営業職について3年。

最近僕は、すごい能力を手に入れた。

それは、少し先の『ビジョン』が見えるという能力。

つい最近、大きな取引先を怒らせてしまった時のこと。

ぼくが納品した商品の備品が3ヶ月で壊れてしまった。

お客さんは、当然、激おこ。

『今すぐ、新品を持ってこい!』

とのこと。

しかし調べたら、故障の原因は、お客さんが落としてしまったか、操作上での力の入れすぎによるものだと判明。

もちろんクレームは通らない。

つまり、ぼくの仕事は、この激おこなお客さんに、

"新品を持っていくことができない"

ということを伝えつつ、

"修理するのにお金をいただかないといけない"

というダブルパンチをクリーンヒットさせ、その上、怒らせないようにする、というものだ。

下手すれば、この重要ユーザーとの取引が終わってしまう。

だいぶ絶体絶命だったので、めちゃくちゃ考えた。

社長との会話を思い出して、そこから社長の性格を導き出し、さらにその社長に、このダブルパンチを当てた時にどんな反応をするか、、、

『あっ!』

シーンとした事務所のデスクで思わず声をだしてしまった。

浮かんだのだ。

ダブルパンチを当てた時のビジョンが。

それもものすごく鮮明に。

『は?何を言っとるんじゃお前はぁ!?

なんで新品買うて3ヶ月で壊れとんのに

クレームが効かんのじゃ!!』

社長室にある、高そうな机を両掌で思いっきり叩きながら怒鳴り声を上げる社長。
ドンっ!と鈍い音が室内に響き、机の上に置いてあった、小さい熊の銅像が振動で倒れる。

『、、、もうええわ、払うわ。

ほなけど、お前んとことはこれで終わりじゃ、これからは他んとこから頼むわ。

もう来んでええ、帰れ!』

社長は、少し間を置いて、冷静な口調でそう言いつつ、倒れた熊の銅像を起こす。
そして、ため息をつきながらぼくを睨みつけ、椅子に深くこしかけた。

こんな感じでものすごく鮮明に頭の中にビジョンが浮かんだのだ!

そして未来は、ぼくが見たビジョン通り全く同じ結果になった。

僕は自分がスーパー営業マンになったと確信した。

その後も、なにかあるたびにビジョンを見た。そして、どのビジョンも少々のズレはあったが、ほぼその通りになった。

ある日、仕事終わりで日報を記入していたぼくのところに主任がやってきた。

『君もビジョンが浮かぶようになったのかい?』

『え?』

ぼくは拍子抜けた声で返答した。

『主任もビジョン浮かぶんですか?』

『ああ、もちろんだ。

相手の性格をよく観察している営業マンなら、みんなビジョンが浮かぶようになるんだよ。』

微笑しながら、主任が言う。

『あぁ、そうなんですか、、』

自分しか使えない能力だと思っていたがためにものすごく恥ずかしくなった。

ぼくの気持ちを察したように主任が続ける。

『でも、全員じゃない。

ビジョンが見えるというのはそれだけお客様のことを考えながら営業しているという証だから、胸を張っていい能力だよ?

でも、スーパー営業マンになるには、まだまだだよ。

次に会得しなきゃいけない能力は

見たビジョンを変えられる能力。』

『ビジョンを、、変える?』 

『いいかい?

決まったことをそのまま伝えたら、相手が怒るビジョンが浮かんだから、もうどうしようもないし、怒られよう。

これじゃ凡人営業マンだよ。

そのビジョンを "伝え方" で無理矢理変えてやるんだ。

先方が怒らないようにね。

あ、ちなみに、偉そうに言ってるぼくのこの能力なんてまだまだだよ?笑

課長、部長、本部長なんかは、もっともっとすごくて計り知れない営業能力を持っているからね?笑』

ぼくは、営業マンをなめていた。

少しできるようになったからといってスーパー営業マンなったと勘違いしていた。

それに今気づかされた。

だがしかし、ぼくのモチベは今、爆上がり中である。

ギラギラした目を主任に向けながら言葉を返した。

『営業マンってすっげーかっこいいですね!』

主任はニコッと笑ってうなずいて、営業フロアから出ていった。

数いる営業マンの中には一体どんな未知の能力を持っている人がいるんだろう?

わくわくと、どきどきが止まらない。

ヒーロー映画を見ているような気持ちだ。

椅子に座りながら軽く背伸びして、デスクから窓の方に歩いていった。

営業フロアから見下ろした夜景を見ながら小声で言った。

『ぼくも絶対なってやる!

スーパー営業マンに!』

 

たかやん

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